白光琉衣は悩んでいた。
それは想い人――――蜂乃屋凪のことである。
不本意だが、あのドジで間抜けで天然で自虐的で、かと思えばやけに思い切りが良くなって大胆なことをする男。
なんで好きになったのかは解らないが、糖衣―――否、アイツの占いを……その前からずっと気になっていた。
父親に似てすぐ謝る姿に腹が立って、でも、そうじゃないと、知った。
というか、親父に似てあいつは図太かった。
他のヤツには迷惑をかけられないとか言うくせに、何故か琉衣には遠慮がなかった。
しかもすぐに琉衣と一緒に死ぬようなことを言う。
本気なのかどうか解らない。
もっと解らないのはそれでもいいと思ってる自分だ。
勿論、糖衣のことがあるから自分は死ぬわけにはいかない。
あの悪魔のこともあるし、白光家のこともある。
でも、それでも、ほんの少しだけ、ほんの少しだけ揺れてしまう。
本当にこいつが死ぬのなら、一緒に逝ってやってもいい、と。
即座に否定するのだが、そう思ってる時点で、ああ――――――堕ちてる、と気付くには十分すぎた。
「蜂乃屋」
「うん?」
「……好きだ」
こいつには遠回しにいっても無駄だ、ということは琉衣は十分すぎるほど解っていた。
だから、素直に、短く言った。
さすがにこいつには伝わるだろう、と思って、いた……のだが!
「うん、オレも」
「……っ」
「っていうか、夜班の……ううん、HAMAツアーズのみんなのこと、好きだ」
「……は?」
何言ってるんだ、コイツ。
琉衣は思った。
なんだそれ、幼稚園児じゃねえんだぞ。
好きです、はい、自分も。みーんなだいすき、それでハッピー、ピース、ピース、平和でラッキーってそうじゃねえ!と琉衣は凪が聞いているラジオの音のせいで自分の思考がおかしくなっていることに気付いて修正する。
「…そうじゃねえ」
「え……」
さすがに気付いたか、と思っているとやはり表情一つ変えず、でも悲しそうな声で、
「琉衣、オレのこと嫌い……がーん」
「……」
だめだ、こいつ。
どうしたらいいんだ。
「おい、蜂乃屋」
「うん……?」
まったく表情を変えないので解りづらいが、何故か琉衣には解る。というかHAMAツアーズのメンバーならみんな解る。
些細な変化だが、コロコロと変わっているのだ、凪の表情は。
もう、ここまできたらこうするしかないだろう、と琉衣は凪の胸ぐらを掴む。
「あ、琉衣、服が伸びちゃう、伸びていいのは福耳だけ」
「うるせえ、黙ってろ」
「え……」
そして、自分よりも身長の高い凪を無理矢理屈ませる。
「――――――」
一瞬。
だけれど、確かにそれはキスだった。
例え、琉衣の唇に凪の歯が当たって、血が出たとしてもキスだった。
「…琉衣」
「……これで、わ
「血が出てる、だいじょうぶ?」
「なんで、てめえは雰囲気をブチ壊すんだよ!!」
「え……」
「好きって言って、キスまでしたんだぞ!わかるだろ!」
そこまで言うと、ぽかんとした顔をして、それから凪は慌てたように顔を真っ赤にした。
「あ……」
「……」
やっと気付いたのか。
というか、なんでこいつはここまでしないとわからねえんだ。
「あ、えっと……」
「……」
そして、なんでオレはこんなヤツが好きなんだ。本当に理解に苦しむ。マジで趣味が悪い。
だけど、それでも――――――
「もう一度言うぞ」
無関係じゃないと、人の問題に土足で入ってきたコイツのことを、
「オレは――――――」
ブプレリウムの花言葉は『はじめてのキス』らしいです。