キミノヨビナ

ずるい
そう思った
ユウヤはまだいい
だけど、アミに…ジェシカやラン、果てにはヒロまで―――何で…何で…
「ジンの馬鹿っ!!」
「…っ!?」
そういきなり口にしたオレにジンは驚いた顔をして振り返る
「バン君?」
だけど、オレはそれに対して謝ったりしない
だって、ほらまた
「…ジンのばーかー」
「…」
ジンは何かしたのかとオロオロしている
そりゃそうだろうジンはどうせ解りやしない
いっつもそう
優しいし頭もいい
その癖、どこか鈍い人だから
「…ごめん」
「何に怒っているか解る?」
「解らない」
ジンは少し考えてからオレに謝る
何に怒ってるのか解るのかと尋ねれば解らないという
だからこれは、解らなくて『ごめん』って事なんだ
「…別にいいけど」
「…ごめん」
うん、そうだよなジンは悪くない
オレが勝手にこだわってることなだけ
だけどさ…だけどさ…
「…でも、羨ましかったんだ」
そういうとジンはどういう意味だというように首をかしげる
此処まで言っても解らないのか
そうだよな
うん、それがジンだよね
「みんなの事」
「…どういう意味だろうか」
「どうもこうも…」
本気で申し訳なさそうなジンに思わず笑いがこみあげてしまう
だけど、オレはまだ許してあげたりしない
「だって、ジンはオレ以外皆呼び捨てで呼ぶじゃん」
「…」
そういえば、それがどうかしたのだろうかというように少し目が見開いてて
やっぱり、解ってないのかと少し悲しくなる
だけど、そんなところも好きだった
「だからさ、オレだけ君づけで寂しかった」
「あ…」
そういうとジンは少しだけ考えて、
それから小さくごめんと謝ってくれる
「…別にいいけどさ」
「だけど…」
「オレも、敬称とかなく呼び捨てで呼ばれてみたい」
「…バン君」
「ジンに呼び捨てにされたい」
「…」
そういえばジンは凄く困った顔をする
何でそういう顔するんだろう
出会った頃はさ、呼び捨てだったのに
山野バンって
なのに、どうしてもう呼んでくれないんだろう
そう思うと少しだけ悲しくなる
「…ごめん」
ジンは少しだけ唇を動かして呼ぼうかどうか考えて
それからやはり口を閉ざして、
そしてゆっくりと謝る
馬鹿
ジンもオレも馬鹿
「…ごめん、バン君」
そう呼ばれるのオレ、嫌なんだ
オレだけ仲間外れだなんて
「…バン君の名前は特別すぎて、呼び捨てなんてもったいなくて出来ないよ」
例えそう言ってくれるとしても、
例えどんなに大切にしてくれていたとしても、
ジンに呼ばれなきゃ意味がないのに