体温ただいま上昇中

何かおかしいなと思ったのは朝起きてすぐ


なんだか頭がふらふらした
だけど、昨日の夜遅くまでLBXをいじっていたからどうせ寝不足だろうと思って特に気にも留めてなかった
「…バンさん、調子悪いんですか?」
「へ?へーき、へーき」
そう笑って言うが、ヒロは心底心配しているようだった
「…ねぇ、バン君今日は休んだ方が…」
「何言ってるんだよ!こうしている時にも敵が―――」
何でそんな事言うんだ
早くしなきゃ
早く、LBXをダンボールに戻してあげなきゃ…
「バン君!!」
そう思っていると、何だか頭の中が真っ白になって
聞こえたのは
珍しく大きな声を出したジンの声だった

その声に応えたいのに、何も声を出せずにただオレは―――
意識を手放した



「…」
いいにおいがする
真っ暗な中そう思った
「バン君」
「…じん…?」
ふわりと頬を撫でられて少しそれが冷たくて
ああ、ジンの手だとすぐに解った
目をゆっくりと開けるとジンが微笑んでくれる
「大丈夫か?」
「…オレ…」
「39.7度もあった」
「…あ」
そう言われて、自分が高熱を出していた事に初めて気づいた
「…あ…あの…」
「ヒロはうわんうわん泣くし、ユウヤはどうしていいのか解らずに慌てているし、
逆にこっちが冷静になれるくらいのものだったよ」
「…う」
つまり、二人は大分酷い状態だったのか…と思ってしまう
心配してくれたのに、結局大丈夫とかいってもっと酷い事になった事を本当に申し訳なく思う

「…ジン…」

ありがとう
そう言おうと思った時だった
「…あの…ジン」
「うん?」
「何その格好」
「ああ…これか」
ついそう口に出してしまうくらい不自然な―――だというのにしっくりきている格好
そう、ジンは何故かピンクのひらひらレースのついたエプロンをつけていて
それが妙に似合っているものだからオレもどう反応したらいいのか困る
「バン君におかゆを作る際に」
「…え?」
「どうぞ」
そう言って、目の前に出されたのは美味しそうなおかゆだった
お米がしっかりと軟らかくなっていて、それでいて梅を入れる事によって味わいが出ている事が見た目だけで解る
「…美味しそう」
「はい」
そう言って、口元にスプーンを運ばれそのまま口に含む
「…美味しい」
「それはよかった」
そう言うジンの笑顔はとても綺麗で
お陰で風邪だというのに熱が逆にあがりそうな程ドキドキしてしまう
それを知ってか知らずかジンは優しい笑顔で
そっと冷たい手を頬に当てて「大丈夫?」と尋ねてくるものだから
ますます熱が上がってしまう
とにかくご飯を食べないとと思っておかゆを口に含んでは飲み込んでいく
「…じ、ジン…その…」
「うん?」
「ね、ねるから…」
そして、ジンから逃れる為にそう告げたら、
「解ったよ」
と言って手が離れていく
それが少しさびしいけれど、
自分が望んだ事だから仕方ないと思っていると―――
「バン君」
「うん?」
ジンの唇が―――
「…っ」
「…それじゃあ、お休み」

ゆっくりとオレの唇に重ねられて、
そのまま水と苦い薬の味が口の中へと入ってくる
慌ててそれを飲み干すと
ジンはにこりと笑って、お盆を持ってそのまま部屋の外へと出ていく
それを見て―――
「…じ、ジンの…」
オレは―――
「ばかぁああああああああ」
ますます寝れなくなったのは言うまでもない話