君の弱点

はじめはコミュニティー障害なんじゃないかというほどだったけれど、
今では無口だけれど、フェミニストで女性に人気
かと思えば、山野バンや青島カズヤ、灰原ユウヤといった同年代の友人にも恵まれ、
年上ではあの番長である郷田や仙道に可愛がられ
年下では大空ヒロといった人物に慕われている
勉強では常にトップの成績
体育では自身の実力はもちろん、的確な指示、アシストで味方を引っ張り、
絵を描かせたら、とても綺麗な絵で
歌を歌わせれば、誰もが聞きほれる美声
その上、近寄りづらかったころとは違い、
話しかければ優しい微笑みで返してくれる
LBXの腕は五本の指に入るほどーーー


「…ジンって弱点とかあるのかな…」
「…え?」
「は?」
「ん?」
「ふぇ?」
「あ?」
「だってさ、あんなに格好良いし、勉強もスポーツも出来るし、LBXは強いし
もう完璧って感じじゃないか」
「え…ええそうね」
「だけどよ、バン」
その言葉にアミとカズは困ったように笑う
「だけど、何?」
「…ジン君の弱点は…ねぇ」
「そんなの明確じゃん」
「ユウヤ、アスカ、知ってるの?」
「…多分、バンさん以外みんな知ってると思いますよ?」
なんだか焦るバンに対してにこりと笑ってヒロは答える
「え!?ヒロまで!?」
そのことに対してバンはショックを受ける
なぜなら、仲間の中で自分が一番ジンと仲が良いと思っていたからだった
勿論、ユウヤ相手なら仕方ないと諦められたかもしれないが、
自分と付き合いの短いヒロやアスカまで知っているとなるとショックでどうしようもなくなる


バンがみるからに小さくなって落ち込んでいるところに、
「ただいまー」
「はぁ、疲れたよー」
「ジェシカさん、ランさんお帰りなさい」
「ええ只今、大変だったわ……ってバン、何してるの?」
丁度、買い物に行っていたジェシカとランが帰ってくる
「あーえっと…」
「ジンの弱点を知らなくてショックだったみたいで…」
「!」
そして、バンはゆっくりと二人を見た
それはジェシカとランは知らないかもしれないと思った少しの期待
だけれどーーー
「ジンの弱点?」
「そんなの…」


「決まってるじゃん」
「決まってるじゃない」


容赦ないその言葉にバンはどん底に落とされるのだった――――




「バンさんーそんなに落ち込まないで下さいよぉ…」
「バン、いい加減元気出せよ」
「…」
「ほら、トマトジュースやるからさ!」
「バン君~ほら、おやつもあるよ」
「Lマガだってあるよ!」
がちゃりと扉を開けてジンが見た時、食堂で酷く不思議な光景があった
「……アミ、なんだあの光景は」
「お帰りなさいジン」
アミは困ったように笑っていたが、ジンを見てすぐに振り返ってまた微笑んだ
「バン君、もしかして具合が悪いんだろうか…」
「違うわ、あれはすねてるだけよ」
「すね…?」
その言葉にジンは首を傾げる
「もしかして、何か嫌な事が?それとも―――」
その様子を見ていてアミはどうしてこれを見て弱点が分からないのかしらと思う
「あなたの弱点をバンだけが知らなかったからよ」
「え?」
どうせうそをついても仕方ないと思ってアミは素直に答える
するとジンは目を丸くした
「…それは…」
そして口元を押さえる
そして、
「…知られるわけにはいかないな」
「…バン以外にはばればれだけれどね」
「……」
そういわれてジンは困ったような顔をした後、「バン君のところに行ってくる」と告げる
「ジン!」
「バン君、ただいま」
そして、目の前にジンが現れるなり、あれだけすねていたバンが顔をあげてにこりと笑った
その様子を見て―――


「なんであれで分からないんでしょうね…」
「馬鹿っぷるだからよ」
「違いない」
「見てて熱くなっちゃうよ」
「トマトジュース飲むか?」
「いらないよ…」
「でも二人とも幸せそうだからいいよね」
「ええ」
そして、くすりと笑って、


「―――ジン(さん)(君)の弱点なんて、バン(さん)(君)以外にありえないのに」


バン以外が知ってる事実をみんなが口にする
勿論同じようにバンの弱点がジンだということも本人が知らないうちに全員が気づいている
そしてそれは多分ーーーお互いだけが知らないちょっとした弱点のお話