「毎週、ジン君から手紙を貰うのが嬉しかったんだ」
そういって笑うユウヤの笑顔
それを見てよかったなと思う半面ーーー悔しかったんだ
「…すごく素敵なお話ですね」
「うん…そうだな」
「…僕も文通ってしてみたいです」
「うん…」
「そういえば、ビリーさんに無理やり住所を教わったのでぜひーーー」
「「それはやめたほうがいい(と思うよ)」」
「…うん、そうだな」
「…バン君?」
「バンくん?」
「バンさん?」
「うん…」
「…」
「…」
「…」
だって、オレは一度も貰ったことないもの
オレは住所だって教わってなかったのに
ユウヤにはそうするんだと思ったらなんだか悲しくなって
「バ、バンさんどうかしましたか?」
「…」
「バン君」
「えっ、え?」
泣くのを我慢していたら、急に名前を呼ばれて
顔を上げたら
「どうしたんだい?」
「…」
「…」
心配そうなジンやユウヤ、ヒロの顔があって
「あ…な、なんでもないよ!」
いつのまにか見られていたという事実に驚いて慌てて目の前のお茶を飲み干した
「…それならいいんだが」
だって、まさかいえる筈がない
自分がジンに手紙を貰えなくて拗ねてますだなんて
「…そういえば、ジンさんとバンさんは付き合ってるから同じように手紙を書いてたんですか?」
「っ!」
そう思っていたら、まさかヒロが地雷を踏むとか思わなかった
慌ててジンを見ると
ジンはなんだか困った顔をしている
当たり前だ
だって、オレは一度も手紙なんて貰ったことないんだから
そう思っていると―――
「…実は書いていたんだ」
頬を少しだけ赤くそめてジンはそう告げた
「え?」
その言葉にオレは慌てて顔を上げる
だってそんなこと知らなかった
まさか、事故で届かなかったとか?
そう思っていると―――
「でも…」
「…でも、どうかしたんですか?」
「何かあったの?」
ジンは言い辛そうに口にする
ヒロとユウヤを身を乗り出して尋ねる
次の言葉を待っていると―――
「…言いたい事がありすぎて…20枚書いても収まらなかったんだ」
「…え?」
「しかも1日では書き終わらなくて…」
それで次から次へと書きたいことがあっていつまでも書き終わらなくて出せなかったんだとジンは困ったように言う
「…ジンさん」
「なんだ、ヒロ」
「最終的にそれ…何枚になったんですか」
「2,000枚を越えたところで数えるのを辞めたんだが…」
「ジン君、愛が重い、重すぎるよ!」
「…やはりそうか」
そういってジンはなんだか困っていた
そんなジンを見てオレは―――
「ジン」
ジンが実は書いててくれたって事が嬉しいということと、
それよりも…
ジンが書いた手紙が、
ジンがオレに伝えたいこと、言いたかったことが知りたくて
オレはゆっくりと口を開いた―――
「…その手紙―――
書き途中でいいからオレに読ませて?」