「ユウヤ」
「ジン君」
ジンはユウヤが仲間になってからずっとユウヤの事ばかり気にしてる
いつも一緒にいて、世話をやいて…
まるでユウヤのことが好きみたい
「…」
ううん、多分実際好きなんだ…と思う
少なくともユウヤの方はそう見える
だって、
ジンの力になりたくて、ユウヤは仲間になったくらいだし、
ジンもまんざらではなさそうだし
いつもユウヤのこと庇ってるし…
「…バンさん、どうかしたんですか?」
「…ヒロ」
考えれば考えるほどなんだか落ち込んでくる
…完全に片思いの失恋決定だし…
「ヒロぉおおお…」
「ば、バンさん!?」
心配そうにオレを慰めようとしてくれる後輩の優しさが目に染みてオレはぎゅっと抱きしめた
そのままヒロをぎゅうぎゅうと抱きしめていると
「…ば、バンさんっ!止めてくださいっ!」
「ヒロ?」
なんだかヒロは慌ててオレをとめようとする
何でだろうと思っているとヒロはなんだか顔を青くして、
「ば、バンさん…あ、あの…」
慌ててる
何でだろうと思っていると、
「ヒロ」
「…っ」
後ろからジンがヒロを呼んだ
「な、なんでしょうかっジンさんっ!!」
「すまないが、ユウヤと一緒にお風呂を掃除しに行ってもらえないだろうか」
そうジンに言われるとヒロはこくこくと頷く
そして、
「ば、バンさん、それじゃあ!」
「あ…」
ヒロはそのまま慌てて走っていく
「…ヒロ」
「邪魔しちゃったかな?」
そう言って、ジンは少し申し訳なさそうな顔をする
「…ユウヤと話してたんじゃないの?」
だけど、オレは素直になれなくて、ついついそう言ってしまう
だけど、ジンは気にせずに
「ああ話終わったよ」
とにこりと笑う
「そ、そう…」
なんだかジンと目を合わせるのが辛くて目を泳がせてしまう
「…バン君は…」
「な、なに?」
「ヒロのことが好きなのか?」
「え?」
そういわれて慌ててジンの顔を見る
「…」
なんで、そんな顔してるんだよ…
「ヒロ?そりゃ後輩だし…」
「そうじゃなくて、恋愛感情で」
「…」
なんでジンにこんなこと言われなきゃいけないんだ?
失恋の後、まさかジンにこんなこと言われるなんて
否、でもジンが好きだとばれるよりいいのかもしれない
だけど―――
「ジンには関係ないだろ…」
「そんなこと…」
そのときのオレは素直にそうは思えなくて
伸ばされたジンの手をつい振り払ってしまう
「あ…」
「…バン君…」
切なそうにジンはオレをじっと見てくる
何でだよ、
何でそんな顔でオレのこと見るんだよ
馬鹿、期待しちゃうじゃないか…
ジンがもしかしたら―――オレのこと好きなんじゃないかって
だけど、そんなことないってわかってる
だって、ジンはオレのこと好きじゃない
ユウヤが現れてからずっとユウヤと一緒だし
ご飯だってユウヤが隣の席だし、
ダックシャトルの席だってユウヤが隣だし
「…僕は―――もう、君には必要ないのかい?」
「…っ」
なのに、
どうして…
「…必要ないのは…」
どうして、そんなこと言うんだよっ
「…必要ないのはジンの方だろ…っ!」
「え?」
「だって、いっつもユウヤと一緒だし、
オレのことなんてどうでもいいんだろっ!」
「…」
オレがどんな気持ちでいるのかなんて、ジンには解らない
オレが―――こんなにジンのことがすきなのに
なのに…
「…っ!」
そう思っていると、気がつけばぎゅっとジンに抱きしめられていて、
「え?」
そして―――ジンは耳元で…
「好きだ」
「…え?」
信じられない言葉を言う
「…バン君が好きだ」
「…」
嘘
嘘ばっかり、
だって―――
「ユウヤのことが好きなんじゃないのかよ」
ジンはユウヤのことが好きなんだろ?
なのに…
「…確かに好きだけれど、恋愛感情じゃない」
「…」
「僕が―――ずっと好きなのは…」
どうして、そんなに優しい瞳で、
「…君だけだよ、バン君」
優しい声で言ってくれるんだよ
オレは―――
その言葉をどう信じたらいいんだ?
答えは、
たった、一言好きだといえばいいだけだとわかっているのに