小学生高学年から中学一年生という時期は女の子の方が成長が早い。
その為、バンやジンの方がアミより小さいというのは仕方ない事だ。
少なくともジンはそう思っている。
しかし、バンはどうしてもそうは思えないらしい。
「何でだよ…」
ぶすっと頬を膨らまて体育座りになっているバン。
「少し前までは大体同じくらいだったのに……」
その姿は明らかに拗ねていた。
理由は単純に自分の手の届かない位置のものをアミがすぐにとれたということ。
ただそれだけだった。
しかし、バンにとってはそういう単純な問題ではないらしい。
「そんなに気にしなくても……」
「だって格好悪いじゃん」
「そんな事無いよ、それに僕と同じくらいじゃないか
それとも、僕も格好悪い?」
「そ、そんな事無いよ!ジンは……その……」
もごもごと何か口の中で言うバンが可愛らしくてジンはついつい微笑む。
「それじゃあ、バン君も格好悪くないじゃないか」
「ち、違うの!それは別問題なの!」
「そうかな?僕はこのくらいの方が可愛くて好きだけど」
「か、可愛いってなんだよ!ジン!!」
その言葉に頬を染めてバンは言い返す。
聞き捨てならないというようにバンは顔をあげてジンに怒るものの、照れ隠しに怒っているようにしか見えなくて逆に可愛らしく見えた。
「だってほら……」
そんなバンが可愛くて、ジンはそっとバンに手を伸ばした
「な、ばっ!」
それからジンはすぐにバンに顔を近づける。
それこそ吐息が感じられるほどに。
「こうやってお互い抱き合うのに楽だし」
「っ!」
そしてジンはバンの腰に手をまわしてそう口にする。
それだけでバンがびくりと肩を震わせたのが解る。
「じ、ジン……」
「キスするのだって…」
「…っ!」
それからもう一度ジンはバンの顔に自分の顔を近づけて、
「…んっ……」
唇をお互い重ねて、
ちゅっとリップ音を立ててキスをした。
「…ね、簡単だしいいじゃないか」
「じ、ジン…」
それだけで目を潤ませてしまうバンが可愛くてジンは更に抱きしめている腕を強めた。
そんなジンにバンは怒っていいのか喜んでいいのか複雑に感じながら見つめた。
「あんまりあせらなくても大丈夫だよ、
ゆっくり二人で大人になっていこう?ね?」
「……っ!」
そう言って微笑まれたら最後、バンはジンにも言えずに頷く他なかった。
それに実際にその通りだとなんだか思えたのだ。
ジンの言うとおり、いずれ人は大人になるのだから急がなくてもいい。
そう、ゆっくり二人で――――――
「なーんて思ってたんだけどなぁ」
「バン君?」
隣にいるジンを見てバンは溜息を吐く。
勝手にA国に留学してしまった恋人。
その恋人は感動の再会の際に自分を置いて勝手にぐいぐいと身長を高くしていった。
それを見たときバンはすぐに裏切られた……と思えた。
「ば、バン君?」
じっと見てくるバンの目線が恥ずかしくてジンが戸惑っていると、
「ジンのばーか」
「え、ば、バン君っ!?」
バンは何だか悔しくてジンから顔をそむけた。
それに対しておろおろと慌てるジン。
でも、バンは何も言わずにジンに背をそむけていた。
「……」
後ろで必死なジンに対して内心ごめんねと思うけれど
、
それを素直に言えるほどバンも大人になれない。
それだけじゃなく、やっぱりずるいから許してなんてあげないと思いながらバンは背を向けていた。
一人で格好良くなってズルイし、ドキドキするじゃないか。なんていう、ジンの喜ぶ理由で怒ってるだなんて、
そんな事は絶対に言ってやらないけれど、