寂しさを殺して

お互いの夢に向かって頑張ろうと口にした。
零れそうな涙を必死に食い止めて、「行ってらっしゃい」と口にした。
いつか、また此処で会える事を祈って。
「……ジン……」
ジンも同じ気持ちであると信じてる。
いつまでもジンが帰ってくる日を待っている。
お互い好きだって言い合った言葉を、想いを信じて。
でも、時々言いたくなるんだ。
「さびしいよ…」
寂しくてたまらないって、
苦しいって、
会いたいよって、
でも言えない。
言ったら全部壊れてしまいそうで。
頑張ってジンと会えなくても大丈夫だって言ってる自分が壊れてしまいそうだった。
ジンを信じてるから大丈夫と言い続けてる嘘がつけなくなってしまう。


ジンを信じてるのは本当。
もう一度此処に帰ってきてくれると信じてるのもほんとう。
でも―――
寂しい気持ちはしょうがない。
会いたい。
傍にいたい。
抱きしめて、キスして、名前を呼んでほしい。
触れてほしい。
そう思う程にジンが愛しくてたまらない。
瞼を閉じればジンの笑顔が思い浮かんではなれない。
あの笑顔がわすられない。
それは嬉しい事で、
同時に辛くてたまらないことだった。
せめて、声だけでもいいから聞きたい。
一度、ヒロに弱音を吐いたら「会いに行けばいいじゃないですか」って言ってたけどそんなこと出来ない。
出来たら苦労しない。
だって、会ったらオレ、ジンから離れられないかもしれない。
ずっと一緒にいてって言ってしまうかもしれない。
そしたらどうしたらいい?
どうすれば―――
「……」
そう思ってると、CCMがゆっくりと鳴りだす。
その着信音に慌てて顔をあげて手に取った。
「は、はいっ!」
『バン君か?』
「ジン…」
本当に以前に比べて少なくなった電話。
それをオレはずっと待ち望んでいる。
そしてその時間だけがオレに安らぎをくれる。
声が聞きたいというオレの願いをかなえてくれる。
それだけが幸せ、
辛くて、どんなに悲しくてもこの時間さえあれば少しだけ幸せだった。


そう―――


言い聞かせて、オレはジンを待ち続けている。



平気だと笑顔で手を振ったけれど、
本当は何処にでもいかないでと祈っていたあの日の自分を消し去る為に。
どんなにさびしくてもジンのぬくもり忘れられない、離れない自分が大丈夫だと言い続ける為に、



オレはずっと―――自分の寂しさを押し殺すしかないんだ……