女神の指先。
思い浮かんだのはそんな言葉。
もしも、世界の創造主たる人物がいるとして、物事を創り上げるとしたらその指はこんな指なんじゃないかと想ってしまう。
長い指先
見た目に反して大きな手
小さな爪
白い肌
LBXをメンテナンスするその手つきはとても綺麗だと想った。
タケルはメカニックなだけあって、手には非常に気を使っている。
そして、メカニック同士のネットワークもある為、ハーネスのメンバーだけじゃなく他国のメカニックの指も無論見たことがある。
荒れた手のジョニー、
男とは思えない綺麗な手をしたコヨミ、
特に特徴のない手をしたフウ、
繊細な手をしたコウタ、
女性らしい柔らかな手をしたリンコ、
コヨミとは逆に女性とは思えないほど大きな手をしたキヨカ、
タコが出来ていてグリスのにおいが染み込んでいるカゲト、
小さい手をしているブンタ、
全員の手を見てきたけれど、その中でもサクヤの手が一番綺麗だと想った。
理由はわからない。
けれど、この手で創り上げるものは美しくて、強く、素晴らしいとタケルは思っている
ライディングアーマー、
ドットガトリンク、
ドットブラスライザー、
トライヴァイン、
バル・ダイバー、
防御、攻撃、素早さ、発想……
ジェノック第一小隊は誰が見てもアラタが中心のチームと思われているが、実際はサクヤの尽力あってのものだとメカニックなら誰もが知っている。
そうでなければ、誇り高きロシウス連合が早々にまねをしたりはしないだろう。
小国のジェノックの、真似
それはある意味、イワンにとってはかなりの尊厳心が傷つけられたに違いない。
だが、それでもせざるをえなかった程のモノをこの手で築いたのだと思うと、タケルはますますこの手が愛しくてたまらなかった。
「……タケル君?」
黙って見ていたタケルのことが気になって仕方なかったのだろう。
「また、爪伸びてる?」
「ううん、そうじゃなくて…」
前に爪を切ったり、ハンドクリームを塗ったことがあるから警戒されたのだろうかとタケルは察した
だが、そんな事じゃない
ただただ、サクヤの手が好きなだけなのだ
「……綺麗な手だな、と思って」
「そんなこと言うのタケル君だけだよ」
「そうかな?」
「そうだよ」
そう言ってはにかむ顔はとても可愛らしい。
とても、綺麗だとタケルは思う
サクヤは何もかも綺麗だった
タケルにとってまるで理想を体現したかのように。
きっと、彼は神様から愛されているに違いない。
でなければ、こんなにも愛らしくて可愛らしい存在がある筈が無いと思う。
その中でもやはり綺麗だと思うのは手だ。
そして、その手こそがサクヤが神様に愛されている証拠だとタケルは思う。
女神の指先を持っている子が神様に愛されていない筈がないのだから。
「そんなことないと思うよ」
「あるって―――っ!!」
タケルの言葉が大げさだと否定しようとしていた時、サクヤの口から悲鳴があがった
「あ……いや、ちょ…たけ、たけるく……っ!」
それもそのはず。
サクヤの指に舌を絡めるかのようにタケルは舐めていた。
「……っ!」
柔らかな舌の感触が指に伝わる
まるで押しつぶされる苺になったかのようにサクヤの指先は弄ばれていた。
指から舌の暖かさと柔らかく押される感触が感じてどうしようもない。
それどころか唇で吸われてサクヤは体を震わせる。
ただ、指先をいじられているだけだというのに。
だというのに、サクヤはどうしようもなく不思議な感覚に覆われていた。
背筋に何かが這いあがる、
それだけではなく、体の中心に熱くなり、
果てには瞳から涙すら溢れ出してきた
理由など解らない。
「た、たけるく…、や、やめて……」
そう言って抵抗するが、口だけの抵抗など煽るだけのものでしかない。
タケルはその言葉にむしろ興奮して指先だけではなく指の付け根すら舐め始めた
「っ!」
指と指の間に舌が綺麗に嵌ってちろちろと音を立てて舐め続ける。
タケルの綺麗な顔が歪んでサクヤの汚れた手に奉仕をしていた。
耳からは厭らしい音が聞こえてサクヤは恥ずかしさで泣き出したくてたまらなくなる
恥ずかしい
どうしようもない。
そう思うのに、
なぜかサクヤはタケルのことを振り払えない。
一言、
たった一言、強く声をあげればいい。
ただ、その手で振り払えばいい、
それだけですべてが終わるというのに、それすら出来ない
タケルはサクヤのことを拘束などしていない
なのに、
サクヤはまるで捕らわれたかのように動けなかった。
やがてタケルの舌はサクヤの血管をなぞるかのように舐め始める
そして少しずつ上へ、上へと這い上がるたびにサクヤの血は逆流するかのような感覚を覚える
頬が熱くて、
体の奥が苦しくて、
胸が苦しくて、
いっそ、解き放てばいいのに、それすら自分では出来ない
そして、自分の気になっている女の子ではなく、なぜ目の前の志が同じ戦友にこんなことをされて、
俗に言う快楽を覚えているのかさえサクヤは理解できなかった
ましてや―――
この感情をなんというのかということさえも、
「…んっ……あ……たけ、たけるく……」
「サクヤ君……」
「……あ、」
ゆっくりと押し倒されて目の前にタケルが見える今の状態になっても、
サクヤは何一つ理解する事が出来ずにいた