ヒロがいきなり消えた
その意味が解らなくて、バン達は探し続けた
何処にいるのか
どうしていなくなったのか
そればかりユウヤは気にしていた
いなくなった日―――ヒロとユウヤは些細な喧嘩をした
本当に些細なものだった
何が原因だったのかは覚えてないけど―――
「そんなに言うなら、ユウヤさんはジンさんやランさんと付き合えばいいじゃないですかっ!!」
そう言われた事だけは覚えていた
ヒロがそう言って走った時、少しの意地で追いかけるのをやめた
だけれど、今となってはなぜあの時ヒロを追いかけなかったのかと後悔している
「…ヒロ君…」
ヒロが消えて約一か月
何処を探してもヒロはいなかった
誰もが捜し続けたがヒロは見つからなかった
「…ユウヤ」
「…大丈夫だよ、ジン君」
青白い顔をしているユウヤを見てジンは思わず声をかける
一緒に来るなとジンは言いたかった
それでも着いてくると言い張ったのはユウヤだった
ニックスでLBXの暴走が確認された
それを聞いて、誰もが初めは今にも倒れそうなユウヤを置いていこうとしていた
だが、ユウヤは行くと言って利かなかった
『動かないでいると、頭がおかしくなりそうなんだ』
そう言われては誰も何も言えない
結局、ヒロがいなくて∑オービスがない以上、LBXの腕が最も良い三人―――バン、ジン、ユウヤで現地を捜査する事となった
「…ヒロ君」
手の中にあるのはヒロと一緒に買ったキーホルダーだった
鍵につけるものがないと言ったユウヤに笑顔で一緒に選んでくれたヒロ
チョイスがセンシマンなあたりがヒロらしい―――
そう思いだしてユウヤはくすりとほほ笑んだ
「…」
たった一ヶ月だというのにとても長い時間に感じた
何度も何度も思った
ヒロに戻ってきてほしいと
帰ってきてほしいと
謝りたい
心からそう思っても、ヒロに会う事は出来なかった
「此処が発信地点だ」
「急ごう」
「…うん」
バンとジンにそう言われてユウヤも二人の後を追って建物の中に入る
すると―――
「…え?」
「…な…」
「…っ」
「なんだ…と!?」
デクーOZが戦っていた
「風摩キリト…?」
3人がかりであの時やっと倒した風摩キリト
そのキリトが負けている
だが、それ以上に―――
『必殺ファンクション』
「どうして…」
『コスモスラッシュ』
プレイヤーの名前を表すかのように綺麗な大空色だったLBXは今は血を思わせるかのような紅蓮に染まり、
『デクーOZ、ブレイクオーバー』
プレイヤーのキラキラと輝いていた瞳はどんよりと曇っていた
「どうして…ヒロ君っ…!!」
その声に反応したかのようにヒロはゆっくりとユウヤ達の方に振り替える
そして―――
「…僕は、司令コンピューターを守る…ガーディアン…」
「ヒロ…」
そう口にして赤いペルセウスがダンボールの中で動き出す
だが、ユウヤが気づいたのはヒロの首元にある首輪だった
「…」
普通の人なら気付かないであろう些細なこと
その首輪は――今まであった人間の首輪とは違う
ペルセウスと同じように紅色に染められたそれ、
わざわざ青色だった首輪を無理に紅色に染めたことに気付いたのはおそらくユウヤだけだった
そして、その行為の意味を理解してユウヤは反吐が出そうになる
「…っ…リュウビ!!」
「「ユウヤ!?」」
バンとジンが戸惑う中、ユウヤはリュウビを繰り出す
けれど、ユウヤは二人の言葉には反応しない
頭の中にあるのは―――相手からヒロを取り返すという事だけ
CCMを構えると、リュウビはユウヤの気持ちに呼応するかのように剣と盾を構える
「…っ…」
そのユウヤを見てヒロもCCMを構える
だが、先ほどと違うのは―――ユウヤを見つめて涙が出ているという事
「…ヒロ君…」
操られているはずなのに、そう思うがそれ以上にヒロが何を考えているのかが解ってユウヤは笑みがこぼれる
「…大丈夫だよ」
そうヒロに…あるいは自分に言う
大丈夫だと、
必ず―――君を取り戻してみせると、
『バトルスタート!!』
その声を聞いて、二人の指は動き出す―――
たった一つの譲れない想いを抱いて、
今、戦いの火蓋は切っておろされた―――