理性を壊して
「……」
あの人は違う人を見ていると思った。
いつも、ジンさんが隣にいて、それが羨ましかった。
ユウヤさんはジンさんの隣にいつもいて、それが低位置で、自然で、ああ、そうなんだと思った。
確証なんてない。
ただ、勘だった。
だって、そうじゃなきゃ……
あんな風にやさしげな瞳でジンさんは見つめないだろうし、
ユウヤさんもあんな風に自然体でいられないんじゃないかと思った
それを理解した瞬間、なんだか辛くて、苦しくて、
そして、何でそんな気持ちになるんだろう?と自分で自分に問いかけた。
そうすれば答えなんてすぐに出てきて、
ああ、好きなんだ
って解っちゃって、
失恋なんだと思った
叶わない恋だと思った
だけど―――
それなら、いっそ
「一度だけでいいんです」
「……ヒロ君?」
目を丸くして、驚いた顔
当たり前だ。
とんでもないことを自分でも言ってるって解ってる
自分でもおかしなことだって知ってる
それでも、
それでも、とめられないのは本当に好きだから
好きだから仕方ないって訳じゃない
許されるわけじゃないって知ってる
だけど、だけど許されたかった
一度だけでいい、
自分もこのぬくもりがほしかった
たった一度だけの火遊びでいいから―――温かくしてほしかった
「一度だけでいいから、抱いてほしいんです」
そして、願わくば、少しでいいから、
違う人に向けているその想いの1000分の1でもいいから、
自分を見てほしかった
こんな事、ヒーローが願ったらいけないってわかってる
でも、止められない
人の不幸を願っている
許されない
でも、でも、でも―――
「ユウヤさん、僕はあなたが―――」
好きなんです
そう呟いた声は、貴方の耳にどうやって届いたのだろうか?
怖くて、顔を見る事が出来なかった
一目惚れだったと思う
キラキラとした瞳が綺麗で、眩しくて、自分なんかが手に入れたらいけない、そんな存在
自分のような日陰の人間が手を伸ばしたら、きっと自分は溶けてしまうんじゃないかと思うくらいに
だから、ずっと我慢していた
本当は傍にいたいのに、でも出来ないからって諦めていた。
でも、いつからだろう?
彼の自分を見る視線に気付いたのは。
熱っぽく浮かされて自分を見るその瞳が欲しくて、その意味は自分が彼に向けているものと同じものじゃないかと思った
そうだったらいいな、嬉しいな
だなんて思ってたけど、やっぱりだめだって思った
だって、ヒロ君は余りにも綺麗すぎるから。
自分には不釣合いだ
自分は彼を汚してしまう
それに今の自分が彼の傍にいることは出来ないと思った
太陽に近づきすぎて、翼を失ったイカロスのように自分は滑稽になれない
乞食に不釣合いなダイヤモンドを手にしたところで何の意味なんてないのだから、
そう言ってみないふりをした
けれど、解ってしまった
自分が誰かと一緒にいると、ヒロ君の目線が険しくなることに
はじめは間違えだろうって思った
だって、ヒロ君はとても純粋なのだ
人を妬んだり羨んだりするようなことをするはずが無い
でも、そうじゃなかった
可愛い顔が崩れたり、眉が顰められていたり、唇が尖がっていたりと、様々な酷い顔が見えるようになって、
ヒロ君もこんな顔をするんだって解った。
嫉妬に駆られたとても、皺くちゃな酷い顔
それを見た瞬間、嫌悪感なんてなかった、むしろ愛しかった
特にジン君と一緒にいるときの顔は酷いもので、それが本当に可愛くてついついやってしまった
もっと、見たい
もっと、見せたらいいのに
もっと、負の感情を露にしてほしい
そうしたら―――
自分のところまで、彼は堕ちてきてくれる
人の不幸を糧にしないと幸福になれない、そんな自分
だけど、それでもいいのなら、
そんな僕のところまで堕ちてきてくれるなら―――
「一度だけでいいから、抱いてほしいんです」
身勝手なそんな願いを抱いていたら、叶ってしまった
その言葉の意味は十分に解っている
そして、どれだけ僕が嬉しかったのかなんて、きっとヒロ君には解らないだろう
「たった、一度だけの…火遊びでいいから、その、えっと…」
「ヒロ君」
「好き、好きなんです……ユウヤさん」
ああ、可愛い
なんて可愛いんだろう
ああ―――本当、
「……ヒロ君、解ったよ」
「ユウヤさん」
「おいで、温かくしてあげる」
「……っ」
このままネジを外して、君を壊したくなるくらい愛しいよ―――
遅くなってすいません、蛍光灯様!
やっと書けました、ユウヒロです……策略家というよりは腹黒いユウヤになってしまって申し訳ないです…
こんなものでもよろしければ読んでやってくださると嬉しいです…