サンタという男は怪しい。
ヒースクリフの部屋に入ろうとしたら捕まえてやるとシノは決めていたが、ヒースクリフに「どうせなら部屋に一緒にいてほしい」と言われ、従者として聞き入れないわけにはいかなかった。
とりあえずムルに言われてクロエが縫ってくれた人が一人は軽く入りそうな靴下をぶらさげて、シノはヒースクリフが眠ったのを確かめてた。
床によたれて、少しだけ目を閉じる。
その時だった、何者かの気配を感じたのは。
「……誰だ!」
気配遮断の魔法を使っているがすぐに解る。
ちゃんとファウストから気配がわかるようになる技術は学んだ。
あの元ギルドであった戦いのように無様にならないようあれから必死で勉強した。
ファウストも「よくやってくれる」と褒めてくれるしな、フフンとシノは大好きな先生の顔を思いかべた後、ヒースクリフの灯りをつけた。
「……」
「……」
「……」
シノは灯りをつけた瞬間に目を疑った。
ヒースクリフの靴下にはファウストが、シノの靴下にはネロが何故か入っている。
「……シノ」
「シノ、あの、これはだな」
「……そういうことか」
シノは即座に理解した。
伊達にブランシェット領主から森番を任されてはいない。物事の理解は早かった。
「ヒース!起きろ、ヒース!」
「……うん……何…シノ……??」
「起きろ、サンタとかいうヤツがオレとお前にファウストとネロをくれたぞ」
「……なにそれ……………えっ!」
揺さぶって、主君であり幼馴染であり親友であるヒースクリフをシノは起こす。
その間にも靴下から出られないのか「いや、違う!」「というかなんで出られねえの……?」という二人の声がしたような気がするが、そんなことはどうでもいい。
ヒースクリフはしばらくして、シノの言葉を理解したのかガバッと布団を剥いで起きた。
「ファウスト先生!ネロ!」
ヒースクリフは慌てて、靴下の中を見た。
そこにはファウストとネロがシノの言う通りに入っていた。
「……これは……俺がファウスト先生をどうブランシェット城に連れて行くか考えてたから……?」
「いやまて、違う。というか君はそんな事を考えてたのか?」
「えっと……転職のために幾つか仕事を探していて……あ、でも、俺は呪い屋の先生も素敵だと思うので兼任でもいいのですが……」
そういいつつ、過去のファウストが呪い屋は褒められた仕事ではないと言っていたことと、今のファウストは満足しているのかもしれないという気持ちで揺れ動く。
「ヒース、サンタがファウストをお前にくれたんだ。もうブランシェット城につれて帰ろうぜ」
「え、いいのかな?えっと……それでネロもいいかな?」
「いや、いいかな……って有無言わせない感じじゃね?」
「というかよくない。ヒース、ご両親も反対するだろうから辞めなさい」
ファウストだけが連れて行かれるならまぁいいか、と思っていたネロだったが、どうやらヒースクリフの口調からすると自分も連れて行かれてしまうらしい。
割と自分の気に入った人間は絶対に手放そうとしないところがあるというのはシノとの関係を見ていて思っていたし、ファウストも同じカテゴリーに入るとは思っていたが、まさか自分も入っているとは思えなくてネロは絶句した。
「ネロはオレが貰ったから、実質ヒースのものだしな」
「それは違うと思うけど……、ネロはシノのものだよ」
「待て待て待て、それも違う!」
「そうか、じゃあ旦那様に頼んでシャーウッドの森にネロの料理屋を建てる許可を貰おう」
「それはいいかも、じゃあファウスト先生はオレの家庭教師として……」
「だから、ご両親が許可しないだろう!」
夜中だというのに腹の底から声を出すファウストに二人はきょとんとした顔をして振り返る。
「ファウスト先生、大丈夫です」
「……嫌な予感がする」
「悪い、オレもだわ」
「うちの両親もファウスト先生の事もネロの事も気に入ってるので!」
まるで太陽のような眩しさでヒースクリフが微笑む。
その様子に、ファウストもネロも、まずい、という気持ちと、まぁ二人がそこまで言うなら…?という若干親馬鹿な気持ちにもなってしまう。
二人はシノのほうを見ると『オレの主君は可愛いだろ?』という自慢げな笑顔でいつも通りヒースクリフの後ろにいるだけだった。
「っていうか、靴下から出られないんだけど」
「ああ、サンタが怪しい人物の可能性があったからミスラに頼んで魔法をかけてもらったからな」
「ミスラが!?」
「……」
その言葉に『俺もミチルとルチルにプレゼントをあげるんだ♪』と言っていたフィガロや、『クロエにプレゼントを贈りたいから頑張らなきゃ』と言っていたラスティカはどうなったのか気になってしまう。
まぁ、彼らは靴下の中に入ってても多分大丈夫だろうが。
「しかし、一番欲しいものが手に入るなんてサンタってヤツは実は良い奴なのか?」
「うん、えっと……二人が俺たちのプレゼントだなんて本当に嬉しいです」
「……」
「あ、でも、お二人が嫌だったら……」
そう言う二人の笑顔にどう答えたらいいのだろうか。
とりあえず、
「とりあえず、出してくれ」
「悪い、外に出てもいい?」
ファウストとネロはミスラの魔法によって捕まり、外に出られない状態をどうにかして貰うべく二人に願った。
クリスマスボイスが可愛すぎたので……。公式でヒースクリフ担当がファウストで、シノ担当がネロなのが可愛い。