「くっ、他に手段はないのか……っ」
パラパラと無駄に厚い法典を見るが見つからない。
夜起こしておくわけにはいかないと若い魔法使いたちはヒースクリフの両親が用意してくれた部屋へ行かせたが、求めるものは一切なかった。
「……フィガロ」
「うん?どうしたの、オズ」
「その男を殺せばいいのではないか」
「……」
「……」
「……」
「……あのさ、ファウストもネロもその手があったか、でも…みたいな顔するのやめてくれる?」
いいわけないでしょ、と優しい南の魔法使いを自認しているフィガロは止める。
「……もう、こうなったら諦めてシノとワンナイトしちゃえば?」
「は?」
「あ?」
「……フィガロ」
「フィガロ先生」
「いやいや、だってしょうがなくない?ほら、他に手段が…」
「ワンナイト、という言い方がよくないかと……」
「そっち!?」
「いや、レノ、そこじゃない」
「そうでしたか、すいません、ファウスト様」
本気で謝ってそうなレノックスにファウストも毒気が抜かれる。
「しかし、ヒースクリフのご両親の聞く話によるとフィガロ先生の言うことしかないのも一理あります」
「……」
「王族と、送り出す家、第三者の女医によって確認されて純潔でなければ王家に嫁ぐ事はできない……」
東の国というやつは、とつくづく思う。
元々この法典ができたのが数百年前の王子がどうしても手に入れたいと好きになった女性がいた。
女性には婚約者がいて、両思いだったものの無理矢理王子が引き裂いた。
しかし、問題は女性が懐妊していたことだ。
結婚後、元婚約者の子は第一王子として出生するものの、不義の子として殺された棄てられたという。
しかし、その子供は不運か幸運か、『魔法使い』だったのだ。
愛する人から引き離されて、愛する人の子すら殺されたと思った女性はそのまま自死を選んだ。
そして、その事を知った魔法使いは東の国の国王を殺した、という悲劇。
だというのに、魔法使いが悪く描かれ今でも伝えられてる。
今の王家はその国王の弟が後を継いで血脈は続いているわけだが。
「そうそう、誰かが婚約者の振りすればいいだけだしね」
「自分の生徒じゃないからといって適当なことを……」
これがミチルやルチルなら絶対にそうはさせないだろう、ということはわかる。
「オズ、あなたはもしアーサーがこんな目にあったらどうする?」
「……」
埒があかない、と思って本人に聞くと、彼女は考え込む。
まずい、と思ったのは外がいきなり荒れ始めたからだ。
「そんなことになれば……」
「……」
「相手を殺す」
「……」
「……」
「やはり、それしかないのか……」
「いやいや、先生、落ち着いて?」
「ふふ、皆さん、悩んでいるようですね」
「婿さんも、人の家の書庫でお茶飲み始めないで」
「ラスティカ、君だったらどうする?」
「うん?」
「クロエが王族に嫁がされそうになったら」
「そうですね……」
穏やかなラスティカだったらきっと良い案があるだろう、と思って聞いてみると、
「僕でしたら」
「……」
「攫って逃げます、世界の果てまで」
「……おお…」
それを聞いたネロは、婿さんは情熱的だな、と思った。
もしもシノが単なる庶民だったらそれも有りだっただろう。
でも、シノはヒースクリフの傍を離れることはないだろう。
それをしてしまえばシノがシノでなくなってしまう。
「あー……」
一番いいのは、確かにフィガロの言うように魔法舎の誰かがシノを抱くことなんだろう、とは思う。
けれど、ファウストからしてみればそれを考えるのは嫌だろうし、自分がそうするのも嫌に決まってる。
ネロだって嫌だ。
可愛がっている妹みたいなシノが魔法舎の誰かとセックスするなんて。
「……ひとまず休もうぜ」
「……ネロ?」
座っている椅子から立ち上がり、ネロは書庫の外へと出る。
「煮詰まってたらいいアイディアも浮かばないだろうしさ」
「……そう、だな」
しかし、シノが聞けば自分で張り型を使って処女膜をぶち破りそうだな、などと思いながらネロは外へと出る。
「……さて、どうしてるかね」
昔の自分だったなら、稼業をしてる時でもなきゃ出入りしなかった城を抜け出しネロは彼女がいるだろう森へと進む。
シャーウッドの森は入り組んでいて初めて入る人間であれば迷うといっていた。
実際シノ抜きで森に入った時にはヒースクリフがいても迷うくらいだ。
でも、今日は違う。
ネロは馴染みの魔力を辿り、そこにたどり着いた。
「シノ」
ぱちぱちと音を立てて燃える炎を見つめていた双眸がゆっくりとネロに向けられた。
「ネロ」
「何してんの?」
「星を見ていた」
「ふーん」
シノの言葉に上を見ると確かに満天の星空があった。
「……」
「ネロ」
「ん?」
なんだろうかと思ってシノを見ようとすると頭に何かが被された。
「……花冠?」
「似合ってる」
「それはどーも」
「シャーウッドの森でも珍しい花だ」
「仕立屋くんに渡したら喜びそうだな」
「ふふん、ヒースやクロエにはまた作ってやる」
「……」
自分たちがシノのため、とはいえみんなが城の中にいる間に、シノは一人でいたのか、とネロは思う。
確かにシノの未来に悩むのは大事なことなのだろう。
でも、今、シノがこうして一人でいるのはいいんだろうか。
他の人間は自分を除いて遊んで、シノだけは一人でいると勘違いしていて。
それはとても、間違っている気がした。
「なぁ、シノ」
「うん?」
魔法舎なら、夜訪ねてきたシノにホットミルクでも出してやるものだが、今は外だ。
何もしてやることはできない。
けれど、言葉を重ねることは、思いを伝えることはできる。
「お前さ、誰かと一生、一緒にいたいと思ったことあるか?」
「ひ」
「ヒース以外で」
どうせ、ヒースクリフの名前が出るだろうというのはわかっていたので先に言っておく。
多分ないんだろうな、と思っていると、
「……ネロ」
「え?」
「ネロとファウスト」
「……」
「ヒースと、ネロとファウストと、ずっと一緒にいたい」
嘘のない深紅の目がじっとネロを見ていた。
「……」
そういうことじゃなくて、と言うべきだ。
けれど、シノのまっすぐな目は100の言葉よりも雄弁で、ネロに訴える。
「オレは結婚とか、そういうのは解らないけど、ネロの子なら産んでもいいって思える」
「……」
その言葉に吹き出すかと思った。
「俺限定なの」
なんで自分限定なのか、ファウストは?と思っていると、
「ファウストは……ヒースが好きだろ」
「あー……」
その言葉にヒースクリフがファウストに向ける目を思い出す。
なんとなくそうだろうな、とは思っていたがシノが言うということは『そういうこと』なんだろう。
「それに、」
「それに?」
「……なんでもない」
そう言って、シノは髪飾りに右手で触れた。
シノはこういうところがある。
何でもあけすけに言うのに、黙る時が。秘密を抱えるところが。
それはシノの優しさだったり、逆に策略的なところだったりするわけだが。
「ネロは?」
「うん?」
「なんで来たんだ?」
「あー……」
今度は自分が聞かれて、ネロは少しだけ考える。
でも、隠すようなことでもないか、と素直に答える。
「シノがどうしてるのかって思ってさ」
「ふーん」
「……」
ネロに向けていた目線を炎に戻し、お互い黙る。
ネロはシノの横顔を見ていた。
端正整ったヒースクリフがいつも傍にいるからだろうか、シノが美しいとか綺麗というのはあまり言われることはない。
けれど、見る人によっては恐怖すら覚えるヒースクリフの美しさに対して、シノは素朴なかわいらしさがあるとネロは感じる。
それにファウストではないが、人に懐かない猫と思っていた猫が無邪気に自分には懐くような、そんな快感は正直あった。
「なぁ、シノ」
「ん」
「実は―――」
そんなシノが見知らぬ相手に組み敷かれると思うとなんだか面白くなかった。
自分はシノの人生に付き合えないというのに。
それでも、シノの人生が少しでもよくなってほしくてヒースクリフの両親が隠していた事を話してしまった。
「そうか」
すると、シノは興味なさそうに相づちを打つだけだった。
「おいおい、わかってるのか?」
「わかってる。ようは好きでもないどころか会った事もない男と結婚させられそうになってるんだろ」
「あ、うん」
あっさりと言われてネロの方が間違ってる気がしてきた。
シノからしては、自分の縁談よりもヒースクリフの縁談のほうが余程重要なのかもしれない。
「だが、旦那様が教えてくれたんだろう?」
「何が?」
「非処女なら問題ないって」
「……シノ」
「なんだ?」
「お前さん、その辺の木の棒を突っ込んだりしないよな?」
「……」
「……」
「……ダメなのか?」
「ダメに決まってるだろ!」
「……ちっ」
やっぱりしようとしてた。
こいつはもう、などと思ってると、「なら、」と小さな唇が動く。
「ネロが抱いてくれ」
「……は?」
「あんた、女を抱いた経験くらいあるだろ」
「は?いや、まぁ……あるけど」
「残念だけど、俺も後ろはともかく前に突っ込まれたことはないからな、棒きれを突っ込むのがダメなら誰かに相手をして貰うしかない」
その言葉にへー、後ろは経験あるのかよ、と感想を浮かべた後、その前にシノが言った言葉を思い出す。
「……いや、いやいや、まて」
「なんだ?」
「えっと、あのさ……」
「?」
シノは心底不思議そうな顔でネロを見つめていた。
なんでもなさそうなシノの顔を見ると、いつも間違ってるのは自分なんだろうか、と思えてくる。
とんでもないことをいつも言ってるのに、何故かシノが合ってる気がしてくるのだ。
こういう時にファウストやヒースクリフがいるといいのに、生憎2人ともいない。
ならば、ネロが軌道修正するしかない。
そう思うのの、
「……尻の方は経験あるのかよ」
「……」
聞いたのはよりにもよってこっちだった。
馬鹿か、自分は!と頭を抱えたくなった。
しかし、シノは気にした様子はなく、返事をしてくれる。
「生きる為に思いつく悪い事は大体やったからな」
「……え……」
それを言うってことは売春をしてた、ということなのだろうかとネロは嫌な気持ちになるが、
「そういう時、捕まって突っ込まれた」
「!」
でも、それ以上に嫌なことだった。
「東の国だと、前に突っ込めば面倒だからな。まぁ中央や西で許されるのかは知らないが」
「許されるわけねえだろ……」
とはいえ、ネロのいた盗賊では、他の国から攫われた女を襲って生まれた子――――なんかが配下にいた。
北の国にはそういった魔法使いは割といる。
欲しいなら手に入れろ。無理矢理奪え。
そういう生活が嫌で、自分はあの国を離れた。
でも、本当はどこの国も同じなのかもしれない。
「まぁ、初潮がくるよりもずっと昔のことだ。救貧院だと罰の一環だったしな」
「……っ」
その言葉にネロは口を手で押さえた。
自分の家族も最悪だったし、思い出したくもない―――――だが、シノはもっと酷い環境にいたのだ。
17歳という若さで、知らなくて良いことを知っている。
それは育ちのせいで、同時に知らなきゃいけない事をこの子は知らなすぎた。
愛や、家族、仲間を。
ディートフリートがシノを育てようとした理由がわかる。
シノは危うくて、同時に可愛くて、大事にしてやりたくなる。
自分はそんな、値する人間じゃないのに
「ネロ」
「……」
「頼む」
「なんで俺?」
ファウストじゃなくても、別の誰かでも良い。
それこそレノックスとか、カインとか、仲良い男なら幾らでもいるし信用にたる相手だろう。
そう思ってるのに、
「そんなの決まってるだろ」
「……」
「信用してる」
「―――――っ」
「あんたのこと、一番」
シノの言葉は真っ直ぐで、いつでも自分の心を突き刺した。
そう言われたらもう、その手を取らない理由はなかった。
「マッツァー・スディーパス」
シノに連れられて小屋の中に入ると、普段彼女が使っている場所なのだろう。
簡素なその部屋は魔法舎のシノの部屋と少し似ていた。
「悪いな、森番用の小屋で」
「いや、それはいいけど……」
本当にするのか?と思っていると、シノがベッドに座り隣を叩く。
「ネロ」
「……」
隣に座るとじっとシノが見つめてきた。
「……」
子供とばかりおもっていたその顔は男を誘うように目が潤んでいた。
少しだけ紅潮した頬に触れた。
「……」
「……キス、しないのか?」
「いや……」
キスくらいは好きな相手のために取っておいた方がいいんじゃねえのか、と思った。
しかし、薄く唇を開けて、シノが妖艶に微笑んだ。
「ネロが嫌じゃないなら――――してくれ」
「……っ」
それだけ。
それだけの行動なのに、全身が沸騰するかのように熱くなって煽られる。
昔、盗賊団に居た頃。
ブラッドリーや仲間たちと行った娼館や、繁華街で自分を誘った一夜だけの関係。
成熟していて、色っぽい女なんて幾らでもいた。
なのに、何故だろうか。
それらの女性よりも、ずっとドキドキした。
まだ発展途上の少女らしいシノの体には性的魅力なんて彼女らに比べたらさしてないというのに。
それでも、ネロの中心はそれだけで反応する。
妹だって、娘みたいな存在だと思っていたのに。
――――――やっぱり、自分は信用に値しない人間だよ、シノ。
そう心の中で呟くが、きっと声に出したら最後、シノは否定するのだろう。
「いいの?」
「ん……」
小さく頷くシノに甘えて自分の唇を重ねた。
たった一瞬。
けれど、確かに柔らかな感触があった。
それだけなのに、
「はじめてだ」
「キスしたの」
無邪気に笑うシノに愛しさを噛みしめる。
「……その、昔は」
「されたことない」
「……」
「大体、死ねって言われながら、殴られてたからな」
「っ……」
当たり前のように言うことが悲しくて、同時に初めてが自分だということが嬉しかった。
「……ネロ?」
自分が死ぬのに。
こいつを置いて死ぬのに。
なのに、言い訳をして抱こうとしている。
求められたから。
そうしないと意味がないから
。
でも――――――
「……それは暴力だろ」
「……」
「セックスってのは……違うだろ」
「……」
強く抱きしめてやれば、シノの手が背中に回り同じように抱きしめられる。
「ネロ」
「ん?」
「もういっかい、して」
そう言われて、ネロはもう一度触れた。
薄く開いた唇に自分の舌を差し込む。
「っ……ん、んん……」
奥に引っ込んでいる舌を自分のもので絡める。
600年以上生きていて、ネロのなかでキスというのはセックスする前の合図のようなものだった。
純情な若い魔法使い達や、生真面目なファウストやレノックスが聞けば驚かれそうだが、北の大地ではそれが当たり前だった。
強ければ何でも手に入る。強いモノに媚びるしかない人間は命の為に体だって売り渡した。
とはいえ、北の女は強いのでそこに同情することはなかったし、気にしたこともなかった。
そういうものだ、と割り切っていた。
だというのに、童貞を棄てた時よりも心臓が高鳴った。
シノの唇から離れて、顔を見れば、嬉しそうに笑っていた。
なんで、そんな、とネロは自分の頬が熱くなるのを感じた。
「……自分で脱ぐ…」
そのまま焦るようにシノの服を脱がせようとするが、上手く脱がせられずにシノ自身に言われてしまった。
「……うん」
格好悪いな、などと思いながらぼーっとシノが裸になる姿を見ていた。
右胸上のベルトが外されて、マントがバサリと床に落ちた。
青いボタンがひとつひとつ外されていく。
考えたら魔法で脱げばいいのではないか、とも思うがこういう一つ一つの手間をかけたほうが愛があるような気がしてしまう。
人にはもう手間も愛情もかけたくないと思っていた。
そうしているつもりだった。
でも、今もまた、こうして知らない間に踏み込んでいる。
言い訳を重ねて。
「……先に言っておく」
「え、何が?」
シノは最後のボタンを外し、腰のリボンに手をかけ、そのまま脱ごうとした時に声を出した。
「……から」
「へ?なに?」
途端に小さい声になるシノになんだろうか、とネロが尋ねると、わなわなと体を震わせて、
「……むね、ちいさいから……」
と呟いた。
「……は?」
「……」
「……い、いや、特に気にしたことねぇから!」
「……この前、いいねって言ってた女、巨乳だっただろ」
「それは……」
確かに依頼で出かけた時にスケスケの衣装で肌が露出している胸のデカイ美女をいいねって言った。
ええ、言いました。言いましたよ、とネロは心の中でやけくそになって呟く。
「オレは……ヒースみたいにスタイルはよくないし、かわいい顔じゃないし、好かれる要素がない」
「……そんなことないと思うけど」
「は?ヒースクリフとオレが並んでたら100人中、150人はヒースのことが好きになるに決まってるだろ」
「いや、どういう計算なんだよ……」
ヒース信仰もここまで来ると大変だな、と此処にはいない彼女の主人に同情する。
控えめな彼女からしてみると溜まったモノじゃないだろう。
最も、褒められなくなるとヒースクリフもヒースクリフでソワソワし出すからある意味お互い様なのだが。
「でも、俺は抱くならシノのほうがいいよ」
「……」
ヒース相手だと色々面倒だし、ファウストじゃないのにそういう事になるのも可哀相だし、と自分に言い訳する。
半分本当で半分嘘だ。
実際は今目の前にいる女の子を抱きたい。
抱き潰して自分の女にしたい。そういう欲望が全身を駆け巡らせる。
「……そうか」
「……うん」
「……」
「……脱がせていいか?」
「……うん」
そう言って頷かれて、シノの手をほどいて、ネロが青いリボンを解いた。
そのままシノの上衣を脱がせ、白いスカートが残る。
「あ……」
ネロはシノを押し倒して、脚からスカートを脱がせてベッドの外へと出す。
「……」
小ぶりの小さな乳房の上で乳首が主張しているのが解った。
それにキスだけで感じたという事実に嬉しくなると同時にネロは一つ気付いた。
「……シノ」
「なんだ?」
「お前さん、下着つけてないの?」
「は?いらないだろ、あんなの」
「いやいや、いるに決まってるだろ!」
そういえば、この子は魔法舎に来るまで髪の毛すらボサボサだった、と思い出す。
ヒースクリフが必死になっていて、
一応髪の毛を解かしてはいたが、結ったり、髪飾りをつけるなんてことはなかった。
クロエからも勿体ないと言われていた。
一方、ネロはというと、出会ったばかりのシノは男なんじゃないかと最初は思っていたくらいで、ファウストから「どうみても女の子だろう」と言われてショックを受けた。
そんな状態だったので、自分のような誤解を生まないためにも魔法舎に来た頃、シノに買い出しに付き合って貰ったお礼にと髪飾りを買ってやった。
そんなのいらない、と言っていたが「お礼だから」と言えば、悪い気はしない様子だった。
その頃には少しだけ髪の毛が伸びていて、髪飾りをつけたところで変ではなかったのだが。
「……帰ったらヒースか仕立て屋くんに付き合って貰って買えよ」
「……なんで」
「いろいろあんだよ」
「色々……」
色々、と言いながら、ネロだって実際にはよく解らない。
だが、今後の自分のためにも、周囲のためにも着けて欲しかった。
「わかった」
「……よし、ちゃんと買えよ」
「ん」
これで一つ魔法舎の平和が守られたな、とネロは思った。
どうせ、シノのことだから小さいんだからいらないと思っているのだろう。
だが――――――
「それより、あんたも脱げよ」
「……」
弱々しく袖を握る様子に、末恐ろしい、と思った。
17歳でこれなら、数百年後にはどうなってるんだろう。
その時、きっと自分はいない。
でも、シノは自分を覚えてるんだろうか。
「……」
きっと、覚えてくれてるんだろうな、と思った。
そう思うと、嬉しい気がした。
脱ぎ捨てれば、ベッドと道具しかない簡素な部屋に裸の2人がいる、という実に奇妙な光景があった。
「ネロ」
「……」
呼ばれて顔を近づければ今度はシノが触れるだけのキスをした。
「……」
舌で唇をノックするとおずおずと開かれて、そのまま侵入して歯茎をなぞってやる。
その度にシノのくぐもった声が聞こえた。
歯茎と歯の間をなぞられるのが気持ち良いようで、その度にビクビクと体を震わせる。
内頬を舐めてやればそれだけなのに体を震わせる。
痛みにはやたら強い子なのに、快楽には弱いのか、と知った。
その様子が凄く可愛くて――――――愛しかった。
2026.1.7執筆。エロ、エロに行くまでが長い……すでに1万7千文字以上書いてる……